「キャッシュレスを普及させるには」
これは、グループディスカッション(GD)のお題の一つです。
そのほかにも、「カフェの売上向上施策を考えよ」、「映画館の売上向上施策を考えよ」、「選挙の投票率をあげるには」など、明確な答えのない問題に複数人で挑み、そのプロセスを面接官が審査する集団選考です。
本記事では、『選考で何をみているのか』、『どのように役割分担するのか』、さらに事前に知っておかなければならない『GDの流れ』を具体例とともに解説します。また、知っておくと役に立つフレームワークも紹介します。
なぜ企業はGDをさせるのか?
GDは面接や書類選考では評価が難しい応募者の個性や能力、チームでの立ち回りを様々な観点で評価するために行います。
業界や職種によって重視されるポイントは異なります。例えば、商社は積極性を、コンサルは論理的思考力を、営業職はコミュニケーション力を重視してみられると言われています。また、企業によっても重視するポイントは変わってくるので業界・企業が求める人物像に即してアピールすることを変える必要があります。
では、具体的にどのような観点があるのか、コミュニケーション力、リーダーシップ、アウトプットへの貢献に大別し挙げていきます。
コミュニケーション力
- 話し手の言語コミュニケーションでは、適切なスピードで話せているか、周りの理解度に合わせて話せているか。
- 話し手の非言語コミュニケーションでは、アイコンタクトをする、ジェスチャーを含める、笑顔など表情で反応する。
- 聞き手の言語コミュニケーションでは、話し手の言葉に対して相づちや同意、建設的な反論、議論を発展させる意見を出せるか、他人が考えることを上手に言語化できるか。
- 聞き手の非言語コミュニケーションでは、うなずきや特にオンライン面接では大きな反応、笑顔など表情で反応する。
リーダーシップ
- チームでの議論を進めるためのファシリテーターになれているか。
- 自分の意見を押し通そうとしたりせず、議論を発展させようとしているか。
- 議論が脱線しそうな場合に軌道修正をして、前提条件からの逸脱を防げるか。
- 話を聞き、自分の意見を押し付けないか。意見を出せていない人へ配慮できているか。
- タイムラインの意識・促進、発言量、グループの雰囲気作り。
※ファシリテートとは良質な結果を得るために議論が進むように促す行為をいい、司会とは異なります。
アウトプットへの貢献
- 根拠に基づいた論理的な意見をだせるか。
- 創造的なアイデア、議論全体を俯瞰する意見、共通認識の確認など。
GD ≠ ディベート
GDではチームで答えを導く過程を通じて、就活生の能力を測っています。
そのため独り善がりな発言をしたり、無闇矢鱈に人を論破したりしてしまうとマイナスの評価を受けてしまいます。GDで求められていることは議論を効率よく前に進めることです。
例えば、全員がファシリテーターをしてしまうと役割が重複してしまい、議論に無駄が発生してしまいます。
そこでGDでは役割分担を決めることが重要です。以下ではGDでの役割について説明します。
役割
司会
チーム一人ひとりの意見を聞き、みんなが納得できるように議論を組み立て、答えへと導く役割です。チームをまとめ、議論を前へと進めてるファシリテートとともに、発言の少ない人に意見を求めるなどといった、コミュニケーション能力、特に協調性が必要となります。
- 役割
- ファシリテート、議論の整理・活性化
- メンバー全員が発言できる環境作り
- 議論の流れの提示
- 評価されるポイント
- 議論の各ポイントで最終的な意思決定をする。
- チーム一人ひとりの意見を聞く。
- 決めた時間で議論が進むようにコントロールする。
タイムキーパー
ビジネスの場では、限られた時間で迅速に結論を求められます。GDも時間内に必ず一定の結論を出す必要があります。そのため、時間が超過しないように管理する「タイムキーパー」が必要です。グループ全体の進捗状況を確認し、議論の進め方や時間配分を考えます。ただし、タイムキープだけをやる人はアウトプットへの貢献が無いので評価されません。通常の議論の参加に加えて行うことで、プラスの評価がなされます。
- 内容
- 時間の把握
- メンバーへの時間の意識づけ
- 評価されるポイント
- 時間に応じて議論の収束を促す。
- 議論への参加に加えて、時間の管理を行う。
- 遅れた場合や早まった場合は調節をする。
書記
複数の候補が挙げられ一つに絞った場合に、なぜそれが選ばれ、他が選ばなかったのかという根拠を明確にするため、議論を記録として残しておく必要があります。この役割を負うのが「書記」です。書記は議論内容を的確にまとめ、抜けが無いかチェックします。タイムキーパーと同じくアウトプットへの貢献が無いので、ただ書くだけでは評価されません。書記としてこれまでの議論を俯瞰した意見を出すことで評価されます。
- 内容
- 意見や議論内容を書く
- 議論に抜け漏れがないかの確認
- 評価されるポイント
- 議論の修正すべきポイントを示す。
- 全体を俯瞰して、抜けをチェックする。
- 要点をまとめつつ、議論の論理構成を整理する。
知っておきたい立ち振る舞い
アイデアマン
量を求めて、議題に応じたアイデアを出すという役割です。議論を新しい切り口で見ることで行き詰まりを解決したり、独創的な意見で解決策を出す人のことをいいます。ただし、一つひとつのアイデアに対して一定の理由が求められます。思いつきだけで提案をどんどん出していくと、それを却下するためにも労力が必要となるので、場面場面に応じた立ち振舞が必要です。
- 内容
- 議題に応じた施策の提案
- 議論の活性化
- 特徴
- とにかく積極的に発言する
- 多角的な視点、切り口での思考が求められる
クラッシャー
グループディスカッションの話し合いにおいて、明らかに議論の妨げになる発言や立ち回りをする人のことを指します。もちろん、クラッシャーになろうとしてなる人はいませんが、GDでの立ち回りを意識せず自分の意見を押し通そうとしたり、残り時間を気にせず根底を覆そうとしたり、思いつきで根拠なくアイデアを出し続けるなど良かれと思ってやってしまうことがあります。どんな行為がNGなのかを抑えておきましょう。
- NG行為
- 自分の意見をとにかく通そうとする
- 根拠なく否定をする
- 立ち回りを全く押さえていないのに司会をする
- 理由のないアイデアで飽和させる
知っておきたいGDの流れ
GDにおいて知っておきたいGDの流れがあります。お題に合わせて若干の修正は必要ですが、まずは基本を抑えておきましょう。
- アイスブレイク&役割分担
- 時間設定
- 前提共有
- 原因分析
- 施策の提案
- 施策の評価
とあるGD対策イベントで使われたお題『キャッシュレスを普及させるには』(20分)を例に、流れを見ていきます。
アイスブレイク&役割分担(事前にすることが望ましい)
相手の性格などが分かれば、議論が円滑に進められるので、事前に話せる時間があれば、積極的に話すようにしましょう。役割分担も事前に決めれる場合は決めて置くことが望ましいです。
時間設定(30秒程度)
結論までたどり着くために、各段階にどの程度時間をかけるのかざっくりとした時間配分を決めましょう。
今回は、前提共有(3分)・原因分析(7分)・解決策の提案(8分)・解決策の評価(1分30秒)とします。
前提共有(3分)
グループ内の意思統一を行うことが目的です。具体的なゴールを仮定しましょう。お題に出てきた言葉を構成する要素分解していきます。要素分解については後ほど覚えておきたいフレームワークとして解説します。また、抑えたいポイントとして5W1Hの情報も挙げられます。
『キャッシュレスを普及させるには』では「キャッシュレスとは?」「普及とは?」を決めます。
原因分析(7分)
前提共有で決めた具体的なゴールと現状とのギャップをあげ、ボトルネックとなっている事項を分析します。このとき、網羅的に議論をするために切り口を決めて置くことが重要です。
網羅的に議論をするために抑えたいフレームワークとしてMECEがあります。これも後ほど解説します。
施策の提案(8分)
原因分析の結果から、ボトルネックが発生している原因に対して仮設を立て、それを解決する手段を提示します。様々な切り口からの仮説とその解決策を提案しましょう。後で紹介するストーリー思考などを意識することで説得力のある仮説を立てることができます。
施策の評価(1分30秒)
現実的には効果がありそうな施策全てを行うということは、様々な制約からできません。かと言って、はじめらから施策を1つにしてしまうと、議論を網羅的に行ったということをアピールできません。どれが一番最善なのか考えましたということを伝えるため、考えた施策を評価していかに収束させるかが問われます。施策はインパクト、コスト、実現可能性の3つのマトリクスを使うとよいです。
役に立つフレームワーク
ここまでGDの決まった流れを見てきました。ここからは思考時に使える決まった流れ、フレームワークを紹介します。フレームワークとは共通して使うことができる考え方です。決まった考え方をすることで一定の質を担保することができます。巨人の肩の上に立って考えましょう!
要素分解 〜困難は分割せよ〜
複雑な問題をもう少し簡単な構成要素に分解します。
- 足し算型の分解
分割したものを足したらもとに戻る分解です。例えば、売上は店舗Aと店舗Bにの売上に分割できます。このとき抽象度は揃える必要があります。 - 掛け算型の分解
対象となる物事を因数へ分解します。例えば、売上は顧客数と客単価に分割できます。
MECE 〜漏れなく重複なく〜
情報の収集・整理・分析に使います。漏れ、ダブリなく情報を分類します。時間的制約を意識して分解の解像度を決めてください。
- 情報集収集の目的を設定
目的を設定する。様々な切り口が存在するので、まずはなんのために分類するのかを決めます。例えば、「ターゲットを明確にするために年代別利用度のを明らかにする」。 - 情報の切り口を決める
例えば、”年齢”の観点で分類する場合、「若者」・「中年」・「高齢者」ではなく「10代未満」、「10代」、「20代」、「30代以上」などと分類します。 - 漏れとダブりをチェックする
設定した切り口でMECEが成立しているかをチェックします。例えば、「若い女性」や「女子大生」などはダブリです。逆に、「10代未満」などが抜けている場合に漏れです。
ストーリー思考 ~思考を具体化する~
仮説を一連の物語と捉えて発想・表現する思考法です。具体的にイメージ化できることと、時系列の因果関係を把握できるという利点があります。
- アイデアの確認
どのような問題をどう解決するアイデアかを確認します。どの立場でその仮説に関わっているのか、仮説を通して登場人物はどのような体験をするのかを考えます。
例えば、「ベンダーとしてキャッシュレスの普及をしたい」。 - 登場人物と価値体験の流れを言語化
明確にしたアイデアにおける登場人物の行動、思考を言語化します。
登場人物の設定 :首都圏の中小規模商店
どんな課題があるのか :個人の商店で加入してもメリットが少ない
施策の解決法 :商店街単位の加入を促す
解決後の理想状態 :中小規模の商店でもキャッシュレスが使える
先輩からのアドバイス
22卒の先輩がどのようにGDで振る舞っていたか聞いてきました!
Mさん
バランス感覚が大事。全体を見て足りない役割でを補うようにしていた。司会はたいていの場合はいるから、網羅性が無い場合やロジックが破綻した場合、すべき議論を飛ばしてしまったときに指摘をする役が多かった。
Kさん
自分のなかで仮説を立てて自分の解答を最初につくっていた。役割はそのときのメンバーによって変え、積極的に引っ張る人がいれば乗っかるようにしてた。自分の仮説があれば、どんなの役割でも、どんな議論の流れもでも対応できる。自分の仮説をもとにファシリテーターをしたり、逆に仮説のアップデートをするようにしていた。
Sさん
問題に対して豊富に知識があればアイデアマンを買って出て積極的に意見を出していた。逆に、知識が無いときはGDの流れを意識してファシリテーターの役をしていた。知識が無くても全体を俯瞰することができれば、抜けている議論を指摘することができたので議論に参加することができた。
結論
GDでは
- コミュニケーション力
- リーダーシップ
- アウトプットへの貢献
が見られており、明確な役割分担
- 司会
- タイムキーパー
- 書記
を決めて、代表的な流れ
- アイスブレイク&役割分担
- 時間設定
- 前提共有
- 原因分析
- 施策の提案
- 施策の評価
を意識して、チームで解答を作り出せるかが問われています。
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